交通 →Traffic → 今週号:This issue: 2026年8月3日(月)

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アメリカの確定申告、まず地図を持つ。ネバダは個人の州所得税ゼロUS tax filing, starting with the map — Nevada has no personal state income tax, so it is mostly federal

連邦は居住者ならForm 1040で原則4月15日、非居住者はForm 1040-NRで4月15日か6月15日。ネバダは個人の州所得税ナシ
連邦は居住者ならForm 1040で原則4月15日、非居住者はForm 1040-NRで4月15日か6月15日。ネバダは個人の州所得税ナシ

確定申告の期限は、税務上の居住者なら原則4月。非居住者は4月か6月に分かれます。ネバダには個人の州所得税がないので、申告は連邦が中心になります。「誰が・いつ・どの書類で」の基礎を押さえれば、最初の一年もこわくありません。

アメリカで暮らし始めて最初の春、多くの人が身構えるのが確定申告(tax return)です。日本の年末調整に慣れていると、自分で申告する文化に戸惑う。ただ、押さえるのは「誰が・いつ・どの書類で」という基本です。しかもネバダには、大きな追い風が1つあります。ここでは「誰が・いつ・どの書類で」を、実用情報として整理します(個別の申告内容は専門家に相談を。これは税務助言ではありません)。

ネバダの追い風——州の所得税がない

まず良い話から。ネバダ州には、個人の州所得税がありません。カリフォルニアやニューヨークのように「連邦+州」の二重申告に悩まされることがなく、個人が向き合うのは基本、連邦(IRS)の申告になります(他州に所得や不動産があれば、その州の申告が別に要ることがあります)。ラスベガスに住んでいるだけで、他州より手続きが一段シンプルです。これは移住先としてのベガスの、地味だけれど効く利点の1つ。

誰が申告する?——「税務上の居住者」かどうか

税務上の居住者(tax resident)かどうかが、どの申告ルールが適用されるかの最初の分岐です。グリーンカード保持者は、原則としてグリーンカード・テストにより米国の税務上の居住者になります。就労ビザなどでも一定の滞在日数を満たすと居住者扱いになります。その日数の判定が実質的滞在基準(substantial presence test)です。2段階で見ます。

  1. 対象となる課税年に31日以上アメリカにいたか
  2. 「その課税年の日数+前年の日数の1/3+前々年の日数の1/6」が183日以上か

両方あてはまれば、原則として居住者です。学生・教員など一部の在留資格には、日数を数えない扱いがあります。

ただし、この計算を満たしても居住者にならない場合があります。抜け道は2つ。1つはcloser connection exception(本国とのつながりが強いことを示す例外)で、条件を満たしてForm 8840を期限内に出す必要があります。もう1つは租税条約のtie-breaker ruleです。どちらかが当たると、所得税上は非居住者として扱われることがあります。居住者かどうかが決まったあとに、所得の額や自営業かどうかといった条件で、実際に申告が要るかが決まります。そして——ここが日本人の見落としやすい点ですが、税務上の居住者は「全世界所得」が課税対象。アメリカ国内の給与だけでなく、日本の収入や口座も申告の対象になり得ます。日本に資産や収入がある人ほど、早めに専門家に確認しておくのが安全です。

ここから先の金額の話は、米国市民と、通年で税務上の居住者だった人向けです。非居住者として1040-NRを出す年や、年の途中で区分が変わった年は、この表ではなくPublication 519とForm 1040-NRの要件で判定します。非居住者は、米国内で事業や人的役務を行って「U.S. trade or business に従事している」と扱われると、例外に当たらない限り、米国源泉の所得がゼロでも申告が要ることがあります。表の金額を下回っていれば申告不要、とは限りません。

そのうえで、収入がいくらから申告が要るかの目安(2025年分の課税年・65歳未満のほとんどの人の場合)はこのあたり(IRS Publication 501)。境界は「以上」です——Pub. 501の表は "file a return if your gross income was at least" と書いているので、ちょうどこの額でも申告が要ります。金額は課税年ごとに変わるので、自分の課税年の数字はPublication 501でご確認ください。

区分申告が必要になる目安
単身(65歳未満)$15,750
夫婦合算(双方65歳未満)$31,500
世帯主(65歳未満)$23,625
夫婦個別$5

ただしこの表がすべてではありません。65歳以上は基準がやや高くなり、自営業・ギグワークはnet earnings from self-employment(自営業の正味の稼ぎ)が$400という基準が別にあって、表の金額に関係なく申告義務が出ます。この$400は、Schedule SEで計算するnet earningsの額で見ます。Schedule Cの純利益そのものではありません。Schedule SEというのは自営業税を計算する用紙で、事業の利益(Schedule C)、農業の利益(Schedule F)、パートナーシップからの分配(Schedule K-1)といった対象所得をここに集めます。集めた額に92.35%を掛けた額(2025年分の様式では4a行)が判定の基礎で、合計(4c行)が$400以上かを見ます。Schedule Cだけの単純なケースなら「純利益×92.35%」と考えてください。これも米国市民・税務上の居住者など、通常の自営業税ルールが当てはまる人の話です。非居住者は原則として自営業税の対象外で、社会保障協定の適用などの例外があります。非居住者の所得税の申告義務は、上に書いた1040-NRのルールで別に判定してください。誰かの扶養に入っている人も別基準です。また表の金額未満でも、源泉徴収された税金の還付を受けるには申告が必要——「義務がない=出さない方がいい」ではありません。

いつ・どの書類で

期限は毎年おなじみ、税務上の居住者の申告期限は原則4月15日。IRSは「15日が土曜・日曜・法定休日にあたる場合は翌営業日まで延びる」と明記しています(郵送なら期限日の消印で間に合います)。非居住者としてForm 1040-NRを出す年は、期限が2つに分かれます。従業員として米国所得税の源泉徴収の対象になる給与を受け取っていた人は、課税年終了から4か月目の15日(暦年なら4月15日)。そうでない人は6か月目の15日(暦年なら6月15日)。2025年分なら、それぞれ2026年4月15日と2026年6月15日でした。使う書類は、自分がどれに当たるかで決まります。

  • 通年で税務上の居住者Form 1040
  • 非居住者の年Form 1040-NR
  • 租税条約のtie-breaker ruleで外国の居住者として扱われる人(dual-resident taxpayer)— Form 1040-NRにForm 8833を添える(ただしFBARの義務は別に残ります。後述)
  • 年の途中で区分が変わった年(dual-status)— 片方を本体、もう片方をstatementとして添える特別な出し方

グリーンカードを持っていれば必ず1040、ではありません。そして在留資格そのものでも決まりません。IRSのH-1B向けページは「H-1Bの人は実質的滞在基準を満たせば税務上の居住者として扱われる」としており、満たさない年は原則1040-NRです。

番号の話も外せません。申告にはSSNかITINが必要で、SSNを取得できる人はSSN、SSNを取得できない人のうち、申告書に載せる税務上の必要がある配偶者・扶養家族などがITIN(Form W-7)を、原則として申告書と一緒に出して取ります。SSNが取れないというだけで自動的にITINの対象になるわけではありません。2018年以後は、認められた税務上の利益のために申告書へ記載される、本人が申告書を出す、そのほか連邦税務上の目的がある、といった場合が原則です。たとえば夫婦個別申告(Married Filing Separately)で、非居住者の配偶者にSSN・ITINの取得義務がない場合は、Form 1040に「NRA」と記載できることがあります(W-7には申告書を添えずに申請できる例外もあります。違いはSSNとITINの記事で詳しく)。日本に金融口座があると、FBARという別の海外金融口座報告が必要になる場合もあります。ここは口座残高の合計に基準額があるので、該当しそうなら必ず確認を。

迷ったら、日本語で相談できる先へ

確定申告は、状況(就労形態・家族・日本の資産・渡米時期)で必要書類も控除もまるで変わります。だから「自分のケースはどうか」は、日本語で相談できる税務の専門家に一度みてもらうのが、結局いちばん確実です。本紙の日本語が通じる窓口に、日米またぎの申告・FBAR・ITINに対応する税務の相談先を載せています。

まとめると、確認するのは5つです。

  • — ネバダは個人の州所得税ナシ。申告は連邦が中心
  • 期限 — 居住者は原則4月15日。非居住者は4月15日か6月15日
  • 書類 — 税務上の居住者はForm 1040。非居住者の年は1040-NR
  • 番号 — SSNかITIN
  • 海外口座 — 日本に金融口座があればFBARも確認

金額の基準はいずれも市民・居住者向けで、非居住者の年は別ルールです。FBARは、United States person(米国市民・税務上の居住者など)が外国金融口座に金融上の利害または署名権限を持ち、暦年中のいずれかの時点で全対象口座の合計額が$10,000を超えた場合が基準です。年末残高だけで見るものでも、1口座ごとに判定するものでもありません。

そして、ここが分かれ道です。租税条約のtie-breakerを使って所得税を1040-NRで出す年でも、FBARの義務は消えません。IRSの内部規程は「租税条約の規定はFBAR上の居住者判定に影響しない」「米国の居住者が非居住者として申告できる条約規定があっても、IRC 7701(b)の居住者テストのどれかを満たしていればFBAR上の居住者判定は変わらない」と明記しています。非居住外国人を居住者として扱う夫婦の選択(IRC 6013(g)・(h))も、逆にFBAR上は考慮されません。所得税上の区分とFBAR上の区分は別物として扱ってください。日本に口座を残している人ほど、ここを取り違えると影響が大きくなります。

この地図を持っていれば、最初の申告シーズンも段取りよく動けます。次回は、タックスシーズン本番(12〜1月)に向けて、控除や還付など「戻ってくるお金」の話を具体的に取り上げます。


※この記事は一般的な情報提供です。 個別の医療・法律・税務・移民・保険・金融に関する助言ではありません。制度・料金・要件は変わることがあり、実際の手続きや判断の前に、医師・弁護士・CPA(会計士)・各公式窓口など専門家にご確認ください。
出典クリックで開く
IRS(irs.gov・Publication 501=所得による申告基準は市民・居住者向け/Publication 519=非居住者とdual-status/Form 8833=租税条約のtie-breaker、を2026-08-01に確認。Schedule SE(Form 1040)2025年分の様式で、3行の集計→4a行「multiply line 3 by 92.35% (0.9235)」→4b行(optional methods)→4c行「If less than $400, stop」という構造を2026-08-01に原文確認。$400の判定はSchedule Cの純利益そのものではなくSchedule SEで計算したnet earningsで行う。H-1Bの居住区分と使用様式は「Taxation of alien individuals by immigration status – H-1B」irs.gov/individuals/taxation-of-alien-individuals-by-immigration-status-h-1b=Page Last Reviewed 2026-07-23、を2026-07-31に原文確認)/ 各税務ガイド(いずれも2026年時点)。所得による申告義務の金額基準(Pub. 501)と申告期限は課税年ごとに変わるため、自分の課税年の数字をIRSで確認のこと。自営業の$400とFBARの$10,000超は、毎年の物価調整で動く数字ではなく別の規定。FBARの基準("the aggregate value of the foreign financial accounts exceeds $10,000 at any time during the calendar year")はFinCEN公式で2026-08-01に原文確認/Form 1040-NRの提出期限は 26 U.S.C. §6072(c) の条文原文(uscode.house.gov、2026-08-01確認)と IRS「Instructions for Form 1040-NR (2025)」に合わせている。注意: IRSの一般解説ページ「Taxation of Nonresident Aliens」は4か月目の15日になる条件に "or you have an office or place of business in the United States" を含めているが、§6072(c) では "office or place of business" の括弧は foreign corporations に係っており、非居住外国人個人の分かれ目は「chapter 24の源泉徴収対象の給与があるかどうか」だけ。IRSの解説ページと条文・Instructionsが食い違っているため、本記事は条文とInstructionsを採った。2026-08-02の監査検収で、次の2点を筆者自身が一次資料で確認して直した=(1) ledeが申告期限を一律「原則4月」と要約し、非居住者の6月15日期限を落としていた。この記事は非居住者・dual-statusの読者も対象にしているため、ledeにも4月/6月の分岐を入れた(本文と「まとめ」は元から分けて書いている)/(2) 租税条約のtie-breakerとFBARの関係が欠けていた。IRS Internal Revenue Manual 4.26.16 は "U.S. tax treaty provisions do not affect residency status for FBAR purposes. A treaty provision which allows a resident of the U.S. to file tax returns as a non-resident does not affect residency status for FBAR purposes if one of the tests of residency in IRC 7701(b) is met." と明記し、同箇所で IRC 6013(g)・(h) の選択も "is not considered when determining residency status for FBAR purposes"、さらに "Using these rules of residency can result in a non-resident being considered a U.S. resident for FBAR purposes. This would occur when a green card holder resides outside the U.S." としている(irs.gov/irm/part4/irm_04-026-016 で2026-08-02に原文確認)。旧稿は所得税上の区分とFBAR上の区分を同じ「税務上の居住者」という語でまたいでおり、条約で1040-NRを出す人がFBARも不要と読む余地があったため、FBARの節に区分が別であることを明示し、書類リストの該当行からも参照を張った。2026-08-12にForm 8840の提出要件を筆者自身が irs.gov/individuals/international-taxpayers/closer-connection-exception-to-the-substantial-presence-test で原文確認="You must file Form 8840, Closer Connection Exception Statement for Aliens, to claim the Closer Connection Exception."、"If you do not timely file Form 8840, Closer Connection Exception Statement for Aliens, you cannot claim the closer connection exception to the substantial presence test, unless you can show by clear and convincing evidence that you took reasonable actions to become aware of the filing requirements and significant steps to comply with those requirements."(Page Last Reviewed or Updated: 16-Jul-2026)。期限内提出が原則である点は本文どおりで、原文には上記の「明白かつ説得力のある証拠」を示せた場合の例外が付いている

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