生活実用Practical living
ぶつけた・ぶつけられた、その瞬間に何をするか——ベガスの車生活の実務What to do in the moment you hit someone, or get hit — Nevada minimum insurance and the steps after a crash
最終更新: 2026年7月6日 | 最終確認: 2026年8月1日 | YO-MIDOKORO編集部 | 約8分

ベガスは車がないと始まらない街。だからこそ、保険の最低ラインと、事故ったときの正しい動き方は、運転を始める前に頭に入れておきたい。慌てないための実務を整理しました。
免許を取り(DMV攻略参照)、車を買った(車の買い方参照)。ベガス生活の足はこれで揃います。でも、その先に必ず知っておきたいことが2つある。保険をどこまで掛けるかと、事故ったとき最初に何をするか。この2つは、いざその場面で調べる余裕がありません。先に頭へ入れておくものです。
保険の最低ライン——「25/50/20」
ネバダで車を持つなら、法律で決められた最低限の保険(対人・対物賠償)に入る義務があります。それが25/50/20。読み方はこうです。
| 記号 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 25 | 対人賠償(1人あたり) | $25,000 |
| 50 | 対人賠償(1事故あたり) | $50,000 |
| 20 | 対物賠償 | $20,000 |
これは2026年も変わっていません。ただし——ここが大事——この最低ラインは、現実の事故費用にはまるで足りないことが多い。ベガスの車は高額化していて、相手の車が新しいSUVなら対物$20,000はあっという間に超える。医療費が絡めば対人もすぐ天井です。足が出た分は自腹。だから多くの専門家が「最低限より一段上」を勧めます。上げたときの保険料差がいくらになるかは、この記事では書けません——ネバダ州保険局が案内しているとおり、自動車保険料は運転歴・事故や請求の履歴・住所・年齢・車種・補償内容・保険会社で大きく変わり、「誰でも月○ドル」と言える公的なデータがないためです。最低ラインと、一段上の案の両方で見積もりを取り、追加保険料と自己負担リスクを並べて比べてください。上乗せ額が小さければ、ここはケチらない方が結局安い、という性質のものです。
覚えておくべき点をいくつか。
- 保険証(proof of insurance)は車内に常備。提示を求められます
- ネバダの保険が必要。州外の保険では車の登録ができません(DMV攻略で既述)
- 保険を切らさない。初回・2回目の失効なら、空白が91日以上になるとSR-22(financial responsibility の証明)を保険会社経由で3年間維持させられます。ただし過去5年以内の3回目の失効は、空白が1〜30日でもSR-22の対象(DMVの段階表では、3回目は4つの空白区分すべてでSR-22が3年+免許停止が最低30日)。これは面倒で割高。更新忘れは避けること
事故ったとき——順番を覚える
動転しているときほど、順番で動けると強い。ネバダでの基本はこうです。
- 安全確保:可能なら車を交通の流れから出す。二次事故を防ぐ。ハザードを点ける
- 警察を呼ぶ:ケガ人がいる、動かせない、相手ともめそう——どれかなら通報。事故証明の元になります
- 情報交換:免許証、保険情報、連絡先。相手の車のナンバーと、可能ならその場の写真(車両位置・損傷・ナンバー)
- その場で警察官がいない場合の報告義務:情報交換などを済ませたあとも、そこで終わりではありません。ネバダ州法(NRS 484E.030)では、公道や一般が立ち入れる場所で起きた事故は、警察官が現場にいなくても、負傷・死亡があった場合または公道上で発生した場合、速やかに警察かネバダ・ハイウェイパトロールへ報告する義務があります。さらに、駐車中の車など「無人の車両・物件」にぶつけた場合の義務が別に2本あります。どこでぶつけても共通なのが、直ちに停止して持ち主を探して運転者と所有者の氏名・住所を伝えるか、それが無理なら同じ内容を書いた紙を車の目立つところに貼り付けること(NRS 484E.040。公道でも、ショッピングセンターの駐車場のように一般が立ち入れる場所でも適用されます)。これに上乗せで、公道(highway)上の場合だけ、損害額にかかわらず直ちに最寄りの警察署かネバダ・ハイウェイパトロールへ通知する義務が加わります(NRS 484E.050)。つまり公道上なら両方。駐車場なら、484E.050だけを根拠に警察への即時通報義務が生じるわけではありませんが、貼り紙などの義務は残ります。「ケガ人はいない」「車は動く」というだけで自己判断せず、警察官が現場にいない公道上の事故は、迷ったら警察へ連絡して報告・出動の要否を確認してください
- 10日以内の届出(重要):けが人・死者が出た、または物損が$750以上と見込まれる事故では、原則として10日以内の報告義務があります。警察が調べた場合でも、自動的に免除されるわけではありません。NRS 484E.070第3項が運転者本人の報告を免除するのは、警察官が事故を調査し、その報告書に各当事者の保険会社の名称と住所・証券番号・補償期間が入っている場合です。現場に警察が来ても、その情報を含む報告が作られたか分からないときは、DMVのSR-1フォームを10日以内に出すか、DMVに確認してください
SR-1が要るのは、ケガ・死亡があったとき、または物損が$750以上のとき。警察が現場を調べなかった場合はもちろん、調べた場合でも、上のとおり自動で免除されるわけではありません。ベガスの修理代で$750はごく普通に届くので、「軽い接触だから」と油断しないこと。提出には事故時の保険証のコピー、車両・物件の損害が1人あたり$750以上なら修理見積り(総損なら total loss の書面)、そして負傷者・死亡者が出た事故なら、自分の車に乗っていて負傷した人それぞれについての医師の負傷証明を添えます。「事故の関係者に誰かけが人がいれば、その全員分を自分が用意する」という意味ではありません——フォームの原文は「a doctor's statement of injury for each person injured in your vehicle」です(添付がないと書式そのものが無効扱い)。フォームには、DMVから提出を求められたのに出さないと、最長1年の運転資格停止もあり得ると書かれています(NRS 484E.080)。示談で済ませたつもりでも、この届出は別問題として残る点に注意してください。
ネバダは「過失のある側が賠償する(at-fault)」州です。どちらがどれだけ悪いかで負担が変わるので、その場で自分の非を安易に認めない、事実(位置・信号・速度感)を淡々と記録する、が原則。ケガや複雑な事故は、弁護士に相談する選択肢もあります。
運転の基本——日本と違うところ
日本の感覚のままだと戸惑う、ネバダ特有のルールをいくつか。
- 赤信号でも右折可:標識で禁止されていなければ、一時停止してから右折してOK(日本にはない)
- Move Over 法:路肩に停まった緊急車両や故障車の脇を通るときは、速度を落とし、いつでも止まれるよう注意して進む義務。加えて、安全に可能なら、その車線に隣接しない車線へ移る義務もあります(NRS 484B.607)。車線変更が道路状況・交通・天候などで安全でない、または不可能なときは減速のみで足ります。パトカーや救急車、レッカーの横は特に
- 携帯の手持ち操作は禁止:運転中のスマホの手持ち使用・テキストは違反。ハンズフリーで
- シートベルト:全席着用が基本
- スクールバスの赤ランプ点滅・停止標識:子どもの乗り降りで赤ランプが点滅していたら停止義務があります(NRS 484B.353)。分かれ目は道路の形。中央分離帯や物理的な仕切りがある道路では、対向車線は止まらなくて構いません。それ以外の道路では両方向とも止まります
細かいルールはDMVの交通法ページが一次情報です。保険の最低額、SR-22の91日、SR-1の$750と10日、運転資格停止の期間は、いずれも改定され得る境界です。判断の前に一次情報でご確認ください。
まず押さえること
- 保険は最低ライン(25/50/20)だけでなく一段上も見積もる。増える保険料と、事故のときに自腹になりうる額を並べて決める
- 保険証を車に常備、空白を作らない(SR-22回避)
- 事故は「安全→警察→情報交換」。ケガ・死亡または物損$750以上なら、10日以内にSR-1(警察が調べた場合も、自動では免除されません)
- 赤信号右折・Move Over・手持ち携帯禁止は日本と違う要注意ポイント
ベガスは、車さえ乗りこなせれば一気に生活が広がる街です。守りの部分(保険と事故対応)を先に固めておけば、あとは安心してハンドルを握れます。
次回は、毎年やってくる確定申告(タックスリターン)の実務。W-2の見方、ネバダに州所得税がないこと、日本に収入がある場合の注意まで、シーズン前に整理します。
※この記事は一般的な情報提供です。 個別の医療・法律・税務・移民・保険・金融に関する助言ではありません。制度・料金・要件は変わることがあり、実際の手続きや判断の前に、医師・弁護士・CPA(会計士)・各公式窓口など専門家にご確認ください。